6月18日を祝った熊本の皆さん
18日の「海外移住の日」に合わせ

【熊本発・吉永拓哉福岡支局長】6月18日は、第1回契約移民を乗せた笠戸丸がサントス港に到着した日。ブラジルでは「移民の日」として様々な場所でミサや行事が行われている。一方で、日本でもこの日を「海外移住の日」に定めてはいるものの、母国では記念日として特に行事がない。そんな中、移民の父・上塚周平の故郷である熊本県では、ブラジルに縁がある若い世代が中心となって「熊本ブラジルの日 実行委員会」を組織し、6月18日を同県とブラジルの友好記念日として祝おうとイベントを催した。
イベントの企画者は、熊本市を拠点にサンバダンサーとして活動する伊藤雅史さん。伊藤さんは昨年9月から半年間、サンバの修業でブラジルに滞在。その際、サンパウロ(聖)市で熊本県人会の日下野良武さんと会い、「熊本に住む若者たちの手で、熊本ブラジルの日を作ってほしい」と頼まれた。その後、伊藤さんは、聖州プロミッソンのコロニアを訪ね、上塚周平の墓参りや熊本県人たちとの交流を深めた。
このような経緯から、「海外移住の日」に合わせてイベントが開催される運びとなった。
『ツナガル マジワル 熊本ブラジルの日』と題したこのイベントは、18日午後7時から熊本市内にあるレストラン「Tutti」で行われた。
熊本県はブラジル人が少なく、当日会場にはブラジル人がまったく見当たらなかったが、それでも約120人が集まり、ブラジルに対する熊本県民の関心の深さがうかがえた。また、イベントにはブラジルで民踊指導を行っている田中豊渕さん、リベルダーデ東洋人街の教会で牧師をやっている徳弘浩隆さんら、コロニアに関わりがある人たちも参加していた。
会場では、ブラジルの料理や飲み物が振る舞われた。その食材がユニークで、干しダラの代わりにトビウオの一夜干しを使ったボリーニョ・デ・バカリャウ、馬肉で作ったキビ、地元の黒豆や県産牛のスネ肉を使ったフェイジョアーダなど、熊本とブラジルの食文化を融合した料理にこだわった。
参加者たちが料理に舌鼓を鳴らす中、スクリーンではブラジル日系社会の歴史が紹介された。
プレゼンテーターは山本真実さん(29)と村上優衣さん(27)。2人は劇団「笠戸丸」のユニットとして、2009年にブラジル公演を行ったことがある。
「地元熊本の人たちに、まずはブラジル日系社会の存在を知ってもらいたい」という2人は、公演の際に世話になった弓場農場やピラール・ド・スールでの思い出を熱く語った。
続いて、伊藤さんがプロミッソンを紹介した。
同移住地は熊本県にルーツがあることから、熊本地震の際は逸早くコロニアで募金を行い、母県の被災者に向けて応援メッセージのビデオレターを作成。伊藤さんがスクリーンでその映像を公開した。
伊藤さんは「ブラジルの熊本県人たちが被災した母県に向けて『頑張れ』と言っていた言葉が胸に突き刺さった」と声を詰まらせながら映像を解説する場面もあり、参加者たちも心打たれ、映像が終わると会場から大きな拍手が沸き起こった。
その後、ブラジル音楽の生演奏で会場は賑わい、「熊本ブラジルの日」のテーマソングが披露されるなど、「6月18日」を大いに祝った。
参加した渕田夕加里さん(35)は、曾祖父母がブラジル移民からの引揚者だったという。「幼いころ曾祖母からブラジルの話をよく聞いていたので、一度は私も行ってみたい国。今日はすごく楽しかったです」と笑顔で話した。
サンパウロ新聞 2016年6月24日付
